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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)1821号 判決 1987年2月05日

原告

大塚利夫

被告

福田和良

主文

一  被告は、原告に対し五二万七三九〇円及びこれに対する昭和五九年五月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は五分し、その四を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は、主文第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告は、原告に対し二七九万三二五〇円及びこれに対する昭和五九年五月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  右1につき仮執行の宣言

二  被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五九年五月二六日午後二時三〇分頃

(二) 場所 埼玉県戸田市笹目南町一三番一九号飯塚金属株式会社(以下「飯塚金属」という。)工場敷地内

(三) 加害車両 被告運転の普通貨物自動車(練馬一一ね一三九二)

(四) 被害車両 原告運転の普通貨物自動車(練馬四五む一二二〇)

(五) 事故態様 被告は貨物を満載した加害車両を運転して後退した際、後方を注意して安全確認をすることを怠つた過失により、加害車両後部を停車中の被害車両後部に衝突させ、折柄被害車両から荷降しを終えて後部荷止めあおりを直していた原告の右手を狭んだものである。

(六) 結果 原告は、本件事故により右手に傷害を負い、通院治療を受けたが、昭和六〇年二月一二日自賠責保険後遺障害等級一四級一〇号該当の後遺症を残して症状が固定した。

また、本件事故により被害車両の後部に損傷を受けた。

2  責任原因

(一) 被告は、加害車両を保有し、これを自己のため運行の用に供していたものであるから、原告の人身損害につき自賠法三条による賠償責任がある。

(二) 被告には、前記のような後方安全確認を怠つた過失があるから、原告の車両損害につき民法七〇九条による賠償責任がある。

3  損害

(一) 治療費 三九万七四八〇円

(二) 通院交通費 二万二六八〇円

(三) 通院慰藉料 一二〇万円

(四) 休業損害 一五三万九〇〇〇円

原告の一日当りの平均収入は九五〇〇円を下らないし、原告の休業日数は一六二日であるから、休業損害は合計一五三万九〇〇〇円となる。

(五) 後遺症慰藉料 八五万円

(六) 逸失利益 七五万六六六〇円

原告の後遺症による労働能力喪失率は五パーセントで、その期間は五年間とみるのが相当であるから、日収九五〇〇円を基礎とし、ホフマン方式により年五パーセントの中間利息を控除して原告の逸失利益を算定すると、次の計算式のとおり七五万六六六〇円となる。

9,500円×365×0.05×4.3643=75万6,660円

(七) 文書代 二〇〇円

(八) 雑費 一万円

(九) 車両修理費 一万一〇〇〇円

(一〇) 損害のてん補 一九九万三七七〇円

4  よつて、原告は、被告に対し、前記3の(一)ないし(九)の損害額から(一〇)のてん補額を控除した残損害二七九万三二五〇円及びこれに対する昭和五九年五月二六日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1は、(五)の被告の過失と(六)の後段を除き、すべて認める。

2  同2の(一)のうち、被告が被害車両を保有し、これを自己のため運行の用に供していたことは認めるが、その余は争う。同(二)は争う。

3  同3のうち、(一)、(一〇)は認めるが、その余は不知ないし争う。

4  同4は争う。

三  被告の過失相殺の抗弁

本件事故は、一般道路上ではなく、飯塚金属の敷地内において発生したものであり、原・被告とも鉄・非鉄金属の回収業を営んでいたものであるが、右敷地内においては、各業者は、まず台貫上にて荷重を含めた全重量を計量したのちヤードと称する場所に積荷を降ろし、再度台貫上に車両を乗せ、車両の重量を計量することによつて、積荷の重量を計量するという方法をとつていた。

事故当時被告は第一回目の計量を終え、原告がヤードにて荷降しを終えるのをまつてヤードに荷を降すべく加害車両の後退を開始したところ、飯塚金属の係員から別のヤードに降ろすよう指示されたので、すぐ左折せずに後退したところ、原告が台貫上に被害車両を乗せず、台貫の手前通路内に被害車両を停車させ、原告も下車していたため、加害車両と衝突したものである。

よつて、原告もこのような危険な場所に停車していた点に過失があるというべきであり、少なくとも四割の過失相殺がなされるべきである。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1は、(五)の被告の過失と(六)の後段を除いて当事者間に争いなく、被告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、本件事故により原告所有の被害車両が損傷したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

二  そして、被告は、加害車両を所有し、これを自己のため運行の用に供していたことは当事者間に争いなく、成立に争いない乙第四号証に原・被告各本人尋問の結果を総合すれば、被告が貨物を満載した加害車両を運転した際、後方の安全確認を怠つた過失により停車中の被害車両に衝突したものと認められ、右認定に反する証拠はない。

よつて、被告は、自賠法三条により原告の身体を害したことによつて生じた損害を賠償する責任があり、かつ、民法七〇九条により本件事故によつて生じた損害を賠償する責任があるというべきである。

三  そこで、原告の被つた損害について判断する。

1  治療費 三九万七四八〇円

原告が治療費として三九万七四八〇円を要したことは当事者間に争いがない。

2  通院交通費 二万二六八〇円

原本の存在と成立に争いない甲第四、第六、第八、第一〇号証によれば、原告は、本件事故により右橈骨骨折等の傷害を受け、昭和五九年五月二六日から同月二八日まで埼玉県戸田市内の戸田中央病院に通院(実治療日数二日)したほか、同月二八日から昭和六〇年二月一二日まで東京都板橋区内の安田病院に通院(実治療日数八一日)したことが認められるところ、右通院日数、原告の自宅と病院との距離及び弁論の趣旨などに照らすと、原告が通院のため原告主張の二万二六八〇円を下らない交通費を支出したものと認めるのが相当である。

3  通院慰藉料 八〇万円

原告の前記通院日数、通院期間等に照らせば、原告の通院中の慰藉料としては八〇万円をもつて相当とする。

4  休業損害 五九万五〇〇〇円

原本の存在と官公署作成部分の成立について争いがなくその余の部分については弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一三号証、原、被告各本人尋問の結果によれば、原告は、昭和五九年五月頃から個人で鉄屑や段ボールの回収業を営んでいるが、妻照子も自宅で笹屋商店の名称でパンの小売業を営んでいるため、昭和五九年三月の確定申告の際には、原告が笹屋商店の名称でパン小売業を営んでいるものとして所得税の申告をしていること、右確定申告書では昭和五八年中の所得金額は二五六万八二九一円と申告していること、原告は廃品回収業の実際の収入は一か月三〇万円位であるというが、原告と同じような廃品回収業を営んでいる被告は一か月二〇万円位の収入であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

ところで、右認定事実からでは原告の本件事故当時の収入を正確に確定することは困難であるが、右認定の事実と弁論の全趣旨によれば、本件事故当時における原告の廃品回収業による収入(経費を控除した純収入)は、控え目にみて一日七〇〇〇円程度と推認するのが相当である。

そして、原告本人尋問の結果によれば骨折した右手はギブスで固定していたが自動車の運転に支障がなかつたため事故後一週間後には廃品回収業を再開したことが認められ、右認定に反する証拠はないから原告の昭和六〇年二月一二日(症状固定日)までの間の休業は、通院による休業を勘案しても八五日間程度と認めるのが相当であり、その間の休業損害は五九万五〇〇〇円と認められる。

5  後遺症慰藉料 七〇万円

原告の後遺症の程度(自賠責保険後遺障害等級一四級一〇号該当)に照らせば、原告の後遺障害に対する慰藉料としては七〇万円をもつて相当と認める。

6  逸失利益 〇円

原告が本件事故後一週間後に廃品回収業を再開したことは前認定のとおりであるところ、原告は、症状固定後後遺症のため廃品回収業を営むうえで特段の支障を受けていると認めるに足りる証拠はないから、逸失利益の損害は認めることはできない。

7  文書代 〇円

原告が文書代を本件事故による損害として請求するが、その支出を認めるに足りる証拠はない。

8  雑費 〇円

原告の主張する雑費の支出を認めるに足りる証拠はない。

9  車両修理費 六〇〇〇円

原告本人尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認められる甲第一二号証によれば、本件事故により原告所有の被告車両は損傷し、それを修理するために六〇〇〇円の費用を要することが認められる。なお、原告は代車料として五〇〇〇円を請求するようであるが、原告が代車を利用したと認めるに足りる証拠はない。

10  過失相殺

被告は、本件事故の発生について原告にも過失があつた旨主張するが、前掲乙第四号証と原告本人尋問の結果によれば、原告は飯塚金属のヤードで被害車両の荷降し作業を終えたのち前進でヤードを出て左折し台貫の近くに停車して後部のあおりを直していた際後退してきた加害車両に衝突されたものであるところ、原告が停車していた場所は特に駐・停車禁止の措置がとられている場所ではないから、原告が台貫近くに被害車両を停車させたことをもつて、本件事故の発生について過失があるとはいい難く、被告の過失相殺の主張は採用するに由ないものというべきである。

11  損害てん補 一九九万三七七〇円

以上の原告の損害は合計二五二万一一六〇円であるところ、この損害のてん補として原告が一九九万三七七〇円の支払を受けたことは当事者間に争いがないから、原告の残損害額は五二万七三九〇円となる。

四  よつて、原告の本訴請求は、被告に対し五二万七三九〇円及びこれに対する本件事故発生の日である昭和五九年五月二六日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容するが、その余を失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 塩崎勤)

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